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塚リョ小話 冬のとある日

 

 今更ではあるが手塚とリョーマの仲の良さはすでに周囲も認めるものがある。先輩と後輩とか、兄弟みたい、というのを通り越して「恋」という感情に行き着いてしまっても、周囲の面々はあっさりとしたものだ。
「いいじゃんいいじゃん☆仲良きことは美しき哉ってね」
「あの手塚に恋人なんて想像もしなかったねえ。しかも、まだ中学生の分際で」
「いやそれはちょっと言いすぎだろう……だいたいお前も同じ身分じゃないか」
 はあ、とため息ついてる青学の母にけらけら笑うのは3-6コンビの彼ら。
「だってさ。あの手塚だよ?あの鉄面皮でお堅い、何かと言えば“グラウンド30週!”の号令男だよ!?」
「……………そう、だけどな」
「まあまあ!おーいしもフジもそこらへんでやめときなって。そんな不毛な会話は過去のことだろ?」
 そうなのである。不二が言うところの「鉄面皮でお堅い何かと言えば“グラウンド30週!”の号令男」には可愛い恋人がいたりするのだ。
「手塚の変わりようももちろんだけどさ」
 おちびまでがスゴイよねえ、と思う菊丸はにまにま笑いながらフェンス向こうにある水飲み場へと視線を転じた。

 

「さむい~~~!さむい!さむい!さむい~~!!」
「……………お前は。どうして寒いならきちんと暖かい格好で来ないんだ」
「だって部活でしょ。動きにくいカッコ、ヤ!」
「や、じゃないだろう。全く」
 部活の休憩時間。今日は久々に引退した3年生らも来ると知って誰より喜んだリョーマである。休憩時間も何気に寄っていって甘えているのだが、手塚からすればリョーマの我侭にしか思えない。
 下は相変わらずのハーフパンツ姿。もう雪が降ってもおかしくない冬空にいくらなんでも、と思うのだ。

 

「ホントにしょうがないなあ、越前は」
 大石は菊丸の隣で母の如く、心配性な顔を見せるけれど。コンビの相方は当然わかっていて。
「ホントだよねえ。しょうがないね、越前は」
 似たような台詞を言って。だが、不二はくすくす笑っている。菊丸が速攻で「だよねえ」と笑い返して。
「?笑うところなのか?」
 大石はちょっと鈍いので二人の笑いの意味に気付かない。仕方ないなあ、と菊丸はもうちょっと見てて、と再び手塚たちを目で追わせた。

 

 実は作戦、だったりする。寒い寒いと騒げば公私混同はしないと言い張る手塚でも冷たい手のひらを暖めるように握ってくれるんじゃないか?―――と。
<部長のことだしダメ元だけどね>
 手塚と恋仲になったのだってリョーマからの告白がきっかけだった。あれは告白なんてかわいいものではなかった。ちょっとした意見の食い違いと心のすれ違いで言うはずのなかった気持ちを吐き出してしまった。それも「もうアンタのことなんて忘れる」という大言までオマケにつけて。
 ………まあ、結局はその騒動があって手塚とリョーマの仲は飛躍的にアップした。偶然その場に居合わせたテニス部3年生らには後々ずいぶんとからかわれる羽目になったけれど。
<カルピンなら何を言いたいのか目を見ればわかるのになあ……>
 ニンゲンって不便。リョーマはそんなことを思いながら手塚を見上げた。
 手、握ってくれないかなあ………。琥珀の瞳に想いをのせながら。

 

 ああこの目に弱いんだ―――――と手塚は変わることのない表情で思う。
 たった二つしか違わない年下の恋人は普段は滅法生意気で尊大で挑発屋で困った後輩なのだが私的部分での彼はというと、決してそんなことはなく。むしろ構って遊んで、と強請ってくる彼の飼い猫の如く可愛らしい。きっと性質は猫に近いのだろう。己のテリトリー内に認めたものしか懐かない、気高い子猫。
 いつから恋愛感情の意味で好きになっていたのか。もしかして自分は誰とも恋をしないんじゃないかとさえ思っていたくらいなのだから。
 だから今がこれほど楽しい。傍に心許せる大切な人がいるからどんなことにも挑戦しようと思える。
<弟がいたらこんな感じかと思いこんでいた時期が嘘みたいだな>
 手塚は密かに笑う。ほんの口元を緩めるそれだけ。でも目の前の恋人にはばれてしまう。
「部長?」
 ちょっとだけ小首を傾げる。それを見てまた手塚は笑う。
<どう言っても直らんな……>
 リョーマのその仕草。自分だけがいる時ならまだしも。いや、できるならやめてほしいのだ。そんな無防備に構って遊んで、と言いたげな表情で可愛らしく小首など傾げてくれて。自分の魅力がどれだけのものかわかってない鈍さに苦笑いしたくなるときもあるのだ。いつだったか、その仕草はやめてくれと遠まわしに頼んだのだが意味のわからない彼には通じなかった。やれやれと内心でため息をつくほかなかったくらいだ。
 しかし。
「っくしゅ」
 小さなくしゃみ。目の前の、まだ成長前の小さな身体が寒そうにしていて。
 リョーマ。思わず口走ったと同時に―――――。

「………え」
 ふんわりと。スローモーションみたいな動きのようだった。
「………これで寒くないな?」
 それは二人きりでいる時みたいな甘く穏やかな声音。すぐ耳元で声が聞こえてリョーマはうわ!と背中を震わせる。
「全く。今日はファンタは飲ませんからな。家に帰ったらすぐに風呂に浸かること。カルピンがいるからってきちんと布団をかけないで寝るのもダメだからな」
 言っていることはとても色気がないけれど。その腕がしっかりとリョーマを包み込んで冷たい冬の空気から守ってくれている。
「ぶちょ……」
 家でカルピンを抱っこしてやるととても嬉しそうでよく目を閉じながら、ほあらほあらと鳴く。とっても可愛くて仕方ない。ぎゅっと抱っこしてやるのはスキンシップのひとつでもある。リョーマがカルピンを好きだからカルピンも嬉しそうにごろごろするのだ。
 今のリョーマも。自分では気付いているかどうか。にっこり嬉しそうに手塚の腕の中でその身を寄せている。大好きな人から与えられる温もりは何とも言い難い幸せがある。
「今日のぶちょ、やさしー」
「………特別だ」
 手塚は小さく笑う。
 そう。こんな、誰からの視線が届く公衆の面前では。
 二人きりで過ごす時なら容赦しないで甘やかすのだけれど。こんな寒い日、束の間なら誰も怒りはしないだろう。
 

「あーらら!甘やかしちゃって」
「いいなあ、おちび。おーいしー!俺にもやって!」
「……………あいつらは。一応休憩中とはいえ部活中だぞ」
 さすがの大石も苦笑気味。
「ま、多分おちびはあそこまで望んでなかったと思うんだけどー」
「手塚は時々やたら豪胆になるんだよ。あの時だって」
「?……あ、もしかしてアレか?」
「二人の気持ちが通じ合った時。越前にも驚いたけど、あの手塚がさ」

 忘れるなんて許さない!

「すっごい形相だったねえ。自分でも言った後でびっくりしてたけど」
「あれって恋を自覚した瞬間ってやつだよね」
「青学の帝王も人の子だったってことだな」
 仲間と後輩の恋を3人は微笑ましく見つめている。さっきあんなに寒い寒いと連呼していたリョーマは今は子猫状態で手塚の胸にぴっとりと身を寄せている。
 手塚は手塚でただひたすらに愛おしい顔でリョーマを抱きしめている。
 もうそろそろ休憩も終わる頃だが果たして二人は離れられるのかどうか。
「案外あの二人、ばかっぷるってやつかもね」
 不二が思いついたように言えば菊丸と大石が揃って笑ったのだった。

 

 

 やたら甘い小話がちょっと長くなりました。ほんの数行、塚リョで手を温め合うだけの話だったのに(笑)私の書くテニプリは皆が仲良しこよし。やっぱりこういうの好きなんだよね私。さすがに付き合うきっかけのくだりまで考えると更になっがーーーくなってしまうのでさらりと。

 

 

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